【体を守る】介護職員のための腰痛予防と正しい介助のヒント5選

介護の仕事をしていると、
腰痛』に悩まされたことが、
誰でも一度は経験があるのではないでしょうか?

利用者様の生活を支える大切な仕事ですが、
不適切な動作や毎日の疲労の蓄積により、
知らず知らずのうちに
自分の体を傷つけてしまっていることが
あります。

今回は、
自分の体を守りながら、質の高い介助を行う
ために、介護職員が知ってると役立つ
腰痛予防の知識と、
現場で使える実践的な対策を5つご紹介します。


目次

1. なぜ介護職は腰痛になりやすいのか?

介護職の腰痛の主な原因は、
繰り返し行われる前傾姿勢での動作
不適切な動作が主な原因です。

主な要因

  1. 不適切な動作の反復
    ベッドからの移乗や体位変換など、
    体幹をひねったり、
    中腰で重たいものを持ち上げたりする動作を
    1日に何十回も行うため、
    腰に大きな負担がかかります。
  2. 慢性的な疲労と睡眠不足
    疲労が蓄積すると、
    筋肉の柔軟性が失われ、
    腰回りの筋肉が硬くなります。

    これにより、
    少しの動作でもギックリ腰などの
    急性腰痛症状が出やすくなります。
  3. 準備運動の不足
    仕事の前後や休憩中に、
    腰や股関節のストレッチを行わないと、
    体が硬いまま介助を行うことになり、
    腰に過度な負担がかかってしましいます。

2. 介護職員のための腰痛予防5選

実例1:「持ち上げない」ボディメカニクス徹底活用

腰痛予防の基本は、
持ち上げないことです。

自分の筋力で
利用者様の体重全てを支えようとすると、
腰に大きな負担がかかります。

  • 重心を下げる
    介助の際は、
    膝を曲げて自分の重心を低くします。

    中腰は腰に過度な負担がかかるため、
    絶対に避けましょう。
  • 体を密着させる
    利用者様と自分の体を
    できるだけ密着させます。

    これにより、
    テコの原理が働きやすくなり、
    小さな力で介助が可能になります。
  • 大きな筋肉を使う
    介助時は腰ではなく、
    太ももやお尻の大きな筋肉
    使って動くことを意識しましょう。

実例2:福祉用具を積極活用する

「時間がかかる」
「面倒だ」といった理由で
福祉用具を使わないことも、
腰痛の原因となります。
用具の活用は、
職員の体を守るためとして
徹底して使いましょう。

  • スライディングボード/シートの活用
    車椅子からベッド、
    ベッドからストレッチャーへの移乗時など、
    体幹をひねる動作が避けられない場面では
    積極的に使います。
  • 高さ調整機能の活用
    ベッドや車椅子の高さは、
    必ず職員の腰の位置に合わせて調整してから
    介助を始めましょう。
  • リフト・移乗機器の相談
    全介助が必要な利用者様に対しては、
    介護リフトなどの機器導入を検討・相談し、
    力に頼らない介助方法を検討します。

実例3:休憩中・ケア前後のセルフストレッチ

硬くなった筋肉は腰痛の元です。

介助の前後や休憩中に、
10秒でもいいのでストレッチを
習慣にしましょう。

  • 股関節・お尻のストレッチ
    股関節を柔軟にすることで、
    移乗時に腰をひねる動作を減らせます。

    片足を反対の膝に乗せて
    前にかがむストレッチ
  • 体幹(インナーマッスル)強化
    プランクなど、
    体幹を安定させるトレーニングを
    短時間でもいいので定期的に行い、
    腰の負担を分散させる力をつけます。
  • こまめな休憩
    疲労を感じたら、
    3分でも座って腰を休ませることが大切です。

    疲れを溜め込まないように、
    業務中に意識して休憩を挟みましょう。

実例4:チーム連携と役割分担の明確化

一人で無理をしない仕組みを
チーム全体で作り上げることが、
腰痛予防にもつながります。

  • 二人介助の基準を明確に
    「〇〇様はリスクが高い」
    「××様は体重が重い」など、
    二人介助が必要な利用者様の基準を明確化し、
    遠慮なく声をかけられる環境を作りましょう。
  • 体力に応じた配置
    職員の体力や腰の状況を考慮し、
    配置や担当業務を調整します。

    「腰が辛い」と正直に伝えられる
    心理的安全性の高い職場を作りましょう。
  • 統一された介助法
    介助の方法が職員ごとに違うと、
    利用者様も職員も戸惑い、
    無理な体勢になりがちです。

    正しい統一された介助方法
    全員で確認し合いましょう。

実例5:環境整備と動線の見直し

働く環境を整えるだけで、
無意識にかかる腰への負担を
減らすことができます。

  • ベッドの最適な高さ設定
    介助時に前屈みにならないよう、
    ベッドの高さを常に調整しましょう。

    高さの基準を分かりやすい位置に
    マークしておくことも有効です。
  • 車椅子とトイレの位置
    移乗時に移動距離を最小限にするため、
    車椅子をベッドやトイレに
    できるだけ近づけるよう心がけます。
  • 整理整頓
    介助中に足元に物が散乱していると、
    つまずきやとっさの体勢変更で腰を痛めます。

    安全な動線を確保するため、
    常に整理整頓を徹底しましょう。

3. まとめ:腰痛予防は「質の高い介護」に直結する

介護職員が自分の体を守ることは、
利用者様への安定した質の高いケア
繋がります。

腰痛は特別なことではなく、
ボディメカニクス
用具の積極的な活用
こまめなストレッチだけではなく、
利用者様の力を利用する介護技術や、
骨盤ベルトなどサポーターの使用など
様々な予防法が存在しています。

『職業病だから…」
と諦めるのではなく、
ご自身の健康を守ることが、
利用者様の生活にも繋がる大切なことです。

今日から一つでも実践し、
長く健康的に続けられる体を
作っていきましょう!


コミュニティと講習会のご案内

このように私たちは、
現場ですぐに使えるアイディアを発信しています。

他にも、
笑空というコミュニティや講習会、
交流会などを開催しています。

10月は
『腰を守る!移乗動作と予防体操』の
講習会を開催します。

興味のある方は、
こちらから詳細をご確認ください。

詳細はこちら:

https://ldpdf.hp.peraichi.com/?_gl=11qwwv47_gcl_au*NDM2NjM5MTYwLjE3NTc5MDE2NjEuMTY4NTk1MDIwNi4xNzU5NzE2ODQyLjE3NTk3MTY4NDE.&_ga=2.30308735.139407299.1759716838-1340098679.17579016

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

目次