筋力低下と筋持久力低下のどちらが、高齢者の転倒の大きな原因になるか

今回は、高齢者の転倒の要因としてよく挙げられる筋力低下、筋持久力低下についてのお話です。

結論から言うと、どちらの要素も転倒に深く関わっています!

そもそも筋力とは、『1回の動作でどれだけ力を出せるか』ということで、

筋持久力とは、『その動作をどのくらいの時間続けられるか』ということです

例えば筋力が低下すると、立ち上がるのがそもそも大変・足がなかなか上がらない・姿勢を真っすぐに出来ない…など

動作そのものが困難になるため、転倒に繋がるリスクが高くなります。

筋持久力が低下すると、長い距離は歩けない・同じ姿勢の維持が難しい・すぐに足腰が重たくなる…など

すぐに疲れてしまい足がもつれたり、姿勢が崩れてバランスを崩しやすくなるため、転倒のリスクが上がります。

筋力低下・筋持久力低下と転倒の関係についてまとめると、以下の通りになります。

筋力低下と転倒の関係

  • 姿勢保持の困難: 筋力が低下すると、体幹や下肢の筋肉が弱くなり、立っている姿勢を保つことが難しくなります。ちょっとしたバランスの崩れでも転倒につながりやすくなります。
  • 動作の緩慢化: 日常生活動作(ADL)が遅くなり、障害物を避けたり、急に止まるなどの動作がスムーズに行えなくなります。
  • 立ち上がり動作の困難: 椅子から立ち上がったり、床から立ち上がる動作が遅く、力が入らず、転倒のリスクが高まります。

筋持久力低下と転倒の関係

  • 長時間の立位や歩行の困難: 筋持久力が低下すると、長時間立ち続けていることや、ある程度の距離を歩くことが難しくなります。
  • 疲労によるバランス感覚の低下: 長時間活動すると、筋肉が疲労し、バランス感覚が低下して転倒しやすくなります。
  • 緊急時の対応力低下: 突然の出来事に対して、素早く反応して体を支えることが難しくなります。

このように、どちらも互いに影響し合い転倒の原因になります。

筋力・筋持久力低下を防ぐ予防策

予防策としては適切な運動栄養管理が重要です。

高齢者の転倒を予防するためには、以下のようなバランスの取れたトレーニングプログラムが推奨されます。

適切な運動

  1. 筋力トレーニング
    • スクワットやレッグプレスなどの下肢の筋力を強化する運動。
    • ゴムバンドや軽いダンベルを使った筋力トレーニング。
  2. 有酸素運動
    • ウォーキングや水中エクササイズ、サイクリングなど。
    • 心肺機能を高め、全身の持久力を向上させる。
  3. バランス訓練
    • 片足立ちやバランスボールを使った訓練。
    • ヨガや太極拳もバランス感覚の向上に効果的。
  4. 柔軟性運動
    • ストレッチやヨガで筋肉の柔軟性を保つ。
    • 関節の可動域を広げることで、日常動作を円滑にする。

適切な栄養管理

  1. タンパク質の摂取
    • 筋肉の維持と修復に必要な栄養素。
    • 鶏肉、魚、豆類、乳製品などをバランスよく摂取。
  2. カルシウムとビタミンDの補給
    • 骨密度を保つために重要。
    • 牛乳、チーズ、ヨーグルト、青菜などから摂取。
  3. 十分な水分補給
    • 脱水を防ぎ、全身の機能を維持。
    • 日々、適切な量の水を飲むことが大切。
  4. バランスの取れた食事
    • 野菜、果物、全粒穀物、良質な脂肪を含む食事。
    • ビタミンやミネラルを豊富に摂取し、全体的な健康をサポート。

実は、筋力低下以上に転倒の原因になる要素

ここまで、筋力低下と筋持久力低下の転倒に与える影響についてまとめてきましたが、

実は、筋力低下や歩行・バランス能力低下などの身体虚弱が原因となった転倒は全体の17%ほどです。

それよりも大きな原因は、段差や坂道、コードなどによる環境要因が原因で発生する転倒です。

それは実に全体の30%ほどにもなります!

転ばずに生活を送るためには、筋力などの身体機能を維持するだけでなく

転ばないような環境の整備も大切です。

これからも、健康で自立した生活を送れるように、

高齢者のQOL向上に関する記事をまとめていきます!

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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