運動でQOL低下を防げるのか?

以前のブログで高齢者の生活の質(QOL)の低下には、多くの要因が関与していると解説をしました。

詳しくはこちら⇒https://jp-seniorqol.com/2024/12/07/blog3/

QOLが低下する主な要因をおさらいすると以下のようになります

  1. 身体的健康の低下: 高齢者は慢性疾患や怪我のリスクが高く、これが日常生活の質を低下させることがあります。
  2. 心理的健康の問題: 抑うつや不安、孤独感などの心理的な問題がQOLに影響を与えることがあります。
  3. 社会的孤立: 家族や友人との関係が希薄になることで、社会的な支援が減少し、孤立感が増すことがあります。
  4. 経済的な問題: 収入の減少や医療費の増加など、経済的な負担がQOLに影響を与えることがあります。
  5. 環境的要因: 高齢者が住む環境が適切でない場合、日常生活が困難になることがあります。

これらの要因はお互いに関連しており、一つの要因が他の要因に影響を与えることがあります。
つまり、これらの要素がバランスよく満たされていることで、総合的な生活の質が高まります。

では、ここからが本題です。

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運動はQOL低下を予防できるのか?

よく、介護予防やQOL低下予防には運動がいい!と言われますが、
運動がQOL低下の原因にどのように影響するのかを解説していきたいと思います。

1. 身体的健康の改善

適度な運動は、筋力や柔軟性の向上、骨密度の維持、心肺機能の向上に役立ちます。
特におすすめなのは以下の運動です。

  • 有酸素運動
    ウォーキングや自転車こぎ、水泳などの運動は、心肺機能を鍛え、いわゆる体力(持久力)をつけます
    さらに、ガンや糖尿病、心疾患など高齢者に多い病気の進行を遅らせる効果もあります。
  • 筋力トレーニング
    自重や軽いダンベル、セラバンドを使ったトレーニングでも、筋力を強化することができます。
    また、筋トレをすることで放出されるホルモンが体に様々な良い影響を与えることもわかってきています。
  • ストレッチ
    柔軟性を高め関節の可動域が広がることによって、
    運動時の痛みを軽減したり、体がよく動くようになります。
  • バランストレーニング
    片足立ちなどのバランス能力を鍛える運動を行うことで、歩行や生活動作を安定して行うことができます。

運動で大事なのは、この4つの運動をバランスよく行うことです、
定期的な運動をしていると思っている人でも、上記の1つか2つしか行っていない方が多くいます。
これらはそれぞれ異なる刺激があるので、4つすべての運動を行うことで多くのメリットが得られます。

2. 心理的健康の向上

運動はエンドルフィンやセロトニンの分泌を促し、ストレスや抑うつ症状の軽減に効果があります。
特に効果的な運動は以下の通りです。

  • ヨガや太極拳
    呼吸を意識しながらゆっくり行う運動は、リラクゼーション効果があり、心の安定を促します。
  • 有酸素運動
    例としてエアロビクスやダンスが挙げられます。
    リズム運動にはエンドルフィンやセロトニンの分泌を促し、ストレスを軽減する効果があります。

3. 社会的孤立の予防

集団での運動や地域の運動クラブへの参加は、社会的なつながりを強化し、孤立感を防ぐ効果があります。

  • ご当地体操への参加
    最近ではご当地体操が増えてきています。
    そのような集まりに参加することで、新しい友人を作ることができます。
    ショッピングセンターや集会所などで行っていることが多いので、気になった方は調べてみてください。
  • 地域包括支援センターのプログラム
    中学校区に1つくらいの割合で地域包括支援センターというものが存在します。
    主に介護申請や介護相談などに対応してくれる公共の施設ですが、
    介護予防教室などを開催していることがあります。
    基本的にその地域の方々を参加対象にしているので、
    それに参加することで地域の方々や支援機関との繋がりを作ることができます。

4. 経済的な問題の軽減

運動を通じて健康を維持することは、長期的には医療費の節約につながります。
日本人の生涯医療費は1人当たり役2500万円と言われていますが、
その半分は70歳以降に払うことが多いというデータが厚生労働省から発表されています。

健康な体を保つことで、病気や怪我のリスクを減少させ、医療費を抑えることができます。

5. 環境的要因の改善

運動を通して、安全な環境と危険な環境を学ぶことができたり、生活環境を適応させることもできます。

  • 安全なルートの設定
    転倒には筋力の衰えだけでなく、環境要因も大きく関わるので運動を行いながら、
    安全なルートの確認や段差や坂道などの不整地に対応できる筋力やバランス能力を身につけられます。
  • 屋内運動機器の利用
    ウォーキングなどの屋外で行う運動は天気に左右されます。
    そのため、天候に左右されずに運動できるエクササイズバイクやステッパーなどの
    エクササイズマシーンやバランスボールなどの用具を使用した運動法を取り入れることも有効です。

まとめ

実際に私たちは、デイサービスや地域での健康教室などで運動指導をしていく中で、
運動によってQOLを維持したり向上させたりする効果を実感しています。

今回ご紹介した運動を日常生活に取り入れることで、高齢者のQOLを大幅に向上させることができます。
運動は習慣化と継続が鍵となりますので、無理なく続けられる運動を見つけて楽しむことが大切です。

運動を継続的に行うことで、体力がついた・体が柔らかくなった・よく眠れるようになった・体を動かすことへの自信がついた・生活の満足感が上がったなどのQOL向上に繋がります。

ぜひ、今度とは言わずに『今から』体を動かしてみませんか?

参考文献

https://www.nia.nih.gov/health/exercise-and-physical-activity/four-types-exercise-can-improve-your-health-and-physical

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/syogai.html

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hatsuhatsu1990/1993/21/1993_21_45/_pdf/-char/ja?form=MG0AV3

https://niimi-c.repo.nii.ac.jp/record/323/files/31_18.pdf

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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