人生の目的(生きがい)がQOLにどのように影響するか
高齢化が進む現代社会において、高齢者の生活の質(QOL)を向上させることが大きな課題となっています。
QOLとは、個人が健康的で充実した生活を送るための全体的な幸福感や満足度を指し、
身体的、精神的、社会的などさまざまな側面が含まれます。
その中で「生きがい」を持つことが、高齢者のQOL向上にどれだけ影響があるかについて考えてみましょう。
1. 生きがいとQOLの関係
生きがいとは『人生における目的や意味を見出すこと』であると定義してみましょう。
(※生きがいとは、さまざまな概念を包括していますが、今回はこの概念を定義として考えていきます)
この生きがいを持つことで、日々の生活を前向きに捉え、充実感が得られます。
特に高齢者にとって生きがいを持つことは、以下のようなQOLの向上に大いに影響します。
- 精神的健康の向上
生きがいを持つことで、精神的な安定感や充実感が得られ、抑うつや不安の軽減に繋がります。
精神的な健康は、QOLの重要な要素の一つです。
特に不安は、ゴールが見えない、進んでいる感じがしないなどの悩みの中で増大します。
生きがいを見つけることで目的がハッキリとし、行動を重ねることで停滞から解放され不安の軽減に繋がります。 - 身体的健康の維持
生きがいを感じる活動に積極的に取り組むことで、身体を動かす機会が増え、健康維持に繋がります。
例えば、趣味の園芸や地域活動などが挙げられます。 - 社会的つながりの強化
生きがいを感じる活動を通じて、他者との交流や社会的なつながりが深まり、
孤立感の防止や社会的サポートが得られます。
これもまたQOL向上の重要な要素です。
2. 生きがいがもたらす具体的な効果
高齢者が生きがいを持つことによって得られる具体的な効果について見ていきましょう。
- 認知機能の維持
生きがいを感じる活動は、脳を刺激し、認知機能の維持に寄与します。
例えば、読書や語学、楽器の演奏などの趣味の追求などが、認知症予防にも効果的です。 - 生活のリズムの確立
生きがいを感じる活動に取り組むことで、日々の生活リズムが整い、健康的な生活習慣が維持されます。
規則正しい生活は、身体的健康にも繋がります。 - 新たな挑戦と達成感
生きがいを持つことは、新たな挑戦とそれを達成する喜びをもたらします。
これは自己成長を促し、自己肯定感を高める効果があります。
3. 生きがいを見つける方法
高齢者が生きがいを見つけ、QOLを向上させるための具体的な方法をいくつか紹介します。
- 趣味や興味の追求
以前からの趣味を続けることや、新たな趣味を見つけることが大切です。
手芸、絵画、音楽、園芸など、多様な選択肢があります。
可能であれば、読書などの一人でも行えることと、スポーツや語学など人との関わりが必要な趣味を持つことで、
よりQOLの向上に繋がります。 - 地域活動やボランティア
地域のイベントやボランティア活動に参加し社会とのつながりを深めることで、
生きがいを感じることができます。 - 教育や学び
新しい知識やスキルを学ぶことは、知的刺激を提供し、自己成長に繋がります。
オンラインコースや市民講座などを活用して学びを取り入れるのも良い方法です。 - 家族との時間
家族との交流や支援を通じて、愛情や絆を感じることが、生きがいと幸福感を生み出します。
ここまで見てきたように、新しい知識やスキルを身につけることや人との関わり合いの中で
生きがいを言い出せることが多くあります。
まずは、ご自身が興味のある事を調べてみてください。
そこから、さまざまな繋がりが生まれます。
4. 生きがいを支える社会的サポート
高齢者が生きがいを持ち続けるためには、社会的なサポートが不可欠です。
以下のような支援が重要です。
- コミュニティセンターの活用
地域包括支援センターや老人クラブなどで、さまざまな活動を行っています。
体操などを行う健康教室や趣味活動、お祭りなどのイベントを通じて身体活動や社会的交流を維持・促進する
役割を担っています。 - 医療と福祉サービス
適切な医療と福祉サービスを受けることで、健康を維持し、生きがいを感じる活動に取り組むことができます。
結論
人生の目的や生きがいを持つことは、高齢者のQOL向上にとって欠かせない要素です。
最初に説明したように、QOLはさまざまな要素を含んでいるため、
単に体操やトレーニングのように身体活動を増やして、身体的健康を高めれば良いというわけではありません。
逆に、たとえ病気や障害があっても、生きがいを持つことで
精神的、身体的、社会的な健康を得られ、全体的な幸福感を高めるためることに繋がります。
これらのことは、多くの研究からも明らかになっています。
人生の目的意識が高い群は低い群に比べ身体的健康が有意に高いことが報告されています。
また、運動習慣や社会的活動を持つことで主観的健康観を高めることもわかっています。
以上のことから、
生きがいを持つことで、身体活動が増えたり健康的な行動や習慣の促進につながり、
また、肯定的受容度を高めることからレジリエンス(回復力)の向上にも影響します。
QOLを向上させるためには運動は大切ですが、その上位の概念として『生きがい』が
大切になります。
みなさんも、生きがい(人生の目的や意味)を見つけられる活動を探してみましょう!
参考文献およびサイト
- 厚生労働省.平成30年版高齢社会白書
- 重松良祐,中垣内真樹,岩井 浩一 他.運動実践の頻度別にみた高齢者の特徴と運動継続に向けた課題,体育学研究,52,2007,173-186.
- 厚生労働省老健局老人保健課.介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況(平成29年度実施分)に関する調査結果(概要).平成29年度 介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況(平成29年度実施分)に関する調査結果,2018.
- 厚生労働省.これからの介護予防:介護予防.厚生労働省,2019.
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング. 平成27年度 少子高齢社会等調査検討事業 報告書.2016.
- 長谷川明弘,藤原佳典,星旦一.高齢者の「生きがい」とその関連要因についての文献的考察一生きがい・幸福感との関連を中心に一.総合都市研究(75),2001,147-170.
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