デジタル機器と高齢者の健康問題ー安全で快適な利用のためにー

スマートフォンやタブレット、パソコンといったデジタル機器は、
今や高齢者の生活に深く浸透し、
そのQOL(Quality of Life:生活の質)向上に大きく貢献しています
家族や友人とのコミュニケーション、趣味の拡大、情報収集など、
多くの恩恵をもたらす一方で、
その利用に伴う特定の健康問題も浮上しています
このブログでは、
デジタル機器の使用が高齢者の健康に与える潜在的な影響について掘り下げ、
それらの問題を予防し、
安全で快適なデジタルライフを送るための具体的な対策と、
支援者や家族が知っておくべきポイントを解説します
1. デジタル機器がもたらす身体的な健康問題
デジタル機器の長時間使用は、
特に高齢者において、特定の身体的な不調を引き起こす可能性があります
- 眼精疲労とドライアイ
スマートフォンの小さな画面や、
パソコン画面を長時間見つめることで、
目の筋肉が緊張し、眼精疲労を引き起こしやすくなります
また、
画面に集中することでまばたきの回数が減り、
ドライアイの症状が悪化することもあります
高齢者は元々目の機能が低下しているため、
これらの症状はより顕著に現れる傾向があります - 肩こり・首こり・腱鞘炎
不適切な姿勢でデジタル機器を使用することは、
肩、首、背中への負担を増加させます
特に、
スマートフォンを下向きに覗き込む姿勢は「スマホ首」とも呼ばれ、
首への大きな負担となります
また、
指の酷使による腱鞘炎(ドケルバン病など)も、
スマートフォンのフリック入力やタブレット操作で起こりやすい問題です - VDT症候群(IT眼症)
上記のような眼精疲労、肩こり、首こり、
さらには頭痛やめまい、吐き気などの身体症状に加えて、
イライラや不安感などの精神症状も伴うのがVDT症候群です
これは、
コンピュータやタブレットなどのVDT(Visual Display Terminals)を
長時間使用することで発症する一連の症状群を指します - 転倒のリスク
「歩きスマホ」による転倒は若者にも見られますが、
高齢者の場合はバランス能力や視覚機能の低下から、
より転倒のリスクが高まります
骨粗しょう症などの基礎疾患がある場合、
転倒は骨折などの重篤な結果を招きかねません - 聴覚への影響
イヤホンやヘッドホンで大音量で音楽や動画を長時間視聴することは、
聴力低下のリスクを高めます
高齢者は加齢により聴力が低下していることが多いため、
過度な音量での使用は特に注意が必要です
2. デジタル機器がもたらす精神的・社会的な健康問題
身体的な問題だけでなく、
デジタル機器の利用は高齢者の精神面や社会生活にも
影響を与えることがあります
- 睡眠障害
就寝前にデジタル機器の画面から発せられるブルーライトは、
睡眠を誘発するホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、
寝つきを悪くしたり、睡眠の質を低下させたりすることが指摘されています
高齢者は元々睡眠が浅くなる傾向があるため、
特に注意が必要です - 依存症(インターネット・ゲーム依存)
デジタル機器や特定のアプリ(ゲーム、SNSなど)に過度に没頭し、
日常生活に支障をきたすほど使用が止められなくなる
「依存症」のリスクは、高齢者にも存在します
特に、
社会とのつながりが希薄な高齢者にとって、
デジタル空間は現実逃避の場となりやすく、注意が必要です - 情報過多とストレス
インターネット上には膨大な情報があふれており、
その中には誤った情報や不確かな情報も多く含まれます
情報過多に圧倒されたり、
フェイクニュースに惑わされたりすることで、
不安感やストレスが増大する可能性があります - オンライン詐欺・トラブルのリスク
フィッシング詐欺や架空請求詐欺、
ワンクリック詐欺など、オンライン上には様々な詐欺が存在します
高齢者は詐欺の手口に慣れていない場合が多く、
被害に遭うリスクが高い傾向にあります
これにより、
金銭的な被害だけでなく、
精神的なショックや不信感につながることがあります - 現実世界での交流の減少
デジタル機器での交流が活発になることで、
かえって現実世界での対面交流が減少し、
孤立感を深めてしまうケースも稀にですが見られます
バランスの取れた社会参加が重要です
3. デジタル機器を安全・快適に利用するための対策と支援
これらの健康問題を未然に防ぎ、
高齢者がデジタル機器を安全かつ快適に活用し、
QOLを向上させるためには、
以下の対策が重要です
支援者や家族の皆さんは、
ぜひこれらの点を意識してサポートしてください
3-1. 身体的な健康問題への対策
- 適度な休憩と目のケア
「20-20-20ルール」
(20分ごとに20フィート(約6メートル)離れた場所を20秒間見る)
を実践するなど、定期的に休憩を取り、目を休ませましょう
意識的にまばたきを増やしたり、
目薬を使用したりして、ドライアイを防ぐことも大切です
画面の明るさやコントラストも目に優しい設定に調整しましょう - 正しい姿勢での利用
椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、
画面は目線より少し下になるように調整しましょう
スマートフォンを使用する際も、
できるだけ顔を上げて、腕で支えるなど工夫して、
首や肩への負担を軽減します
必要であれば、
外付けキーボードやマウス、スタンドなどの補助具の利用も検討しましょう - 手指の使いすぎに注意
スマートフォンの操作で指を酷使しないよう、
休憩を挟んだり、音声入力機能を活用したりすることも有効です
痛みを感じたら、無理せず休ませましょう - 歩きスマホ・ながらスマホの禁止
移動中や階段の昇り降り、屋外での使用中は、
デジタル機器の操作を控え、周囲の状況に十分注意を払いましょう - 音量の調整
イヤホンやヘッドホンを使用する際は、
音量を控えめにし、長時間の使用は避けましょう
3-2. 精神的・社会的な健康問題への対策
- 利用時間とタイミングの管理
就寝前2~3時間はデジタル機器の使用を控えるなど、
ブルーライトの影響を避ける工夫をしましょう
スマートフォンの使用時間を確認できる機能などを活用し、
自身の利用状況を把握することも有効です - 情報源の吟味とリテラシー向上
情報の真偽を見極めるためのリテラシーを高めることが重要です
信頼できる情報源(公的機関のウェブサイトなど)から
情報を得るよう心がけ、不明な点があれば家族や支援者に相談しましょう
オンライン詐欺の手口を知り、
怪しいメールやメッセージには対応しないよう注意喚起することも大切です - 現実世界とのバランス
デジタル機器での交流だけでなく、
趣味の集まりや地域活動への参加、
友人との対面での会話など、
現実世界での交流も積極的に行うよう促しましょう
デジタル機器は、
現実世界での交流を補完し、
豊かにするためのツールであることを再認識することが重要です - 依存症の兆候への早期対応
デジタル機器の使用時間が極端に長くなったり、
使用しないとイライラしたり、
他の活動に関心を示さなくなったりするなどの
依存症の兆候が見られた場合は、
早めに専門機関や医師に相談することが重要です
3-3. 支援者・家族ができること
- デジタルリテラシー向上のためのサポート
高齢者向けのデジタル教室への参加を促したり、
自宅で一緒に操作を教えたりするなど、
デジタル機器の操作に慣れるための手助けを根気強く行いましょう - 利用状況への配慮と見守り
高齢者がどのようなコンテンツを、
どのくらいの時間利用しているか、
さりげなく見守り、健康問題の兆候がないか注意しましょう
不調を訴えた場合は、適切な医療機関への受診を促してください - プライバシーとセキュリティの確保
個人情報の取り扱いやパスワード管理の重要性を伝え、
詐欺被害に遭わないよう、セキュリティ対策を一緒に確認しましょう - 共感と対話
デジタル機器の利用で困っていることや不安なことに対して、
共感を示し、対話を通じて解決策を一緒に考える姿勢が大切です
まとめ:デジタル機器を賢く活用し、健康で豊かな高齢期を
デジタル機器は、
高齢者のQOLを向上させる強力な味方ですが、
その利用には適切な知識と配慮が不可欠です
眼精疲労、肩こりといった身体的な問題から、
睡眠障害、依存症といった精神的な問題まで、
潜在的な健康問題に注意を払い、
それぞれの対策を講じることで、
デジタル機器の恩恵を最大限に享受できます
支援者やご家族の皆さんは、
高齢者がデジタル機器と上手に付き合い、
安全で快適なデジタルライフを送れるよう、
温かいサポートをお願いします
デジタル技術の可能性を活かしつつ、
健康を第一に考えることで、
高齢者の皆さんがより豊かで
幸福なセカンドライフを送ることを心から願っています
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