高齢者のQOL向上や介護予防にも貢献する「非運動性熱生産(NEAT)」とは?

人生100年時代。
長生きできるようになった今、*「健康寿命」をいかに延ばすかが重要な課題となっています。
(*健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく、自立して生活できる期間のこと。)
高齢者の方々が健康で質の高い生活を送るためには、身体活動が欠かせません。
しかし、高齢になると、体力や関節の柔軟性が低下し、運動を行うことが難しくなる場合があります。
そこで注目されているのが、**「非運動性熱生産(以下NEAT)」です。
(**NEATとは、運動以外のあらゆる身体活動によって消費されるエネルギーのこと。)
今回は、高齢者のQOL向上にNEATがどのように貢献するのか、
その具体的な効果やNEATを増やすための工夫、注意点などを詳しく解説していきます。
非運動性熱生産(NEAT)とは?
NEATは、Non-Exercise Activity Thermogenesisの略で、日本語では「非運動性活動熱産生」と訳されます。
具体的には、歩行、家事、仕事、趣味活動、さらには立ち上がる、座る、体を揺らすといった些細な動作など、
運動以外のすべての身体活動によって消費されるエネルギーを指します。
NEATは、運動によるエネルギー消費量よりもはるかに大きく、1日の総エネルギー消費量の大部分を占めています。
NEATが高齢者のQOLに与える影響
NEATは、高齢者のQOLに様々な良い影響をもたらすことが科学的に証明されています。
ここでは、特に重要な5つの効果についてご紹介します。
- 身体機能の維持・向上
加齢とともに、筋力やバランス感覚、柔軟性などが低下し、日常生活動作が困難になることがあります。
しかし、
NEATを高めることで、これらの身体機能を維持・向上させることができます。
例えば、
家事や庭仕事、散歩などは、下肢の筋力やバランス感覚を養い、転倒予防に繋がります。
また、
趣味活動や地域活動は、手指の巧緻性や全身の協調性を高め、日常生活動作をスムーズにするのに役立ちます。 - 生活習慣病の予防・改善
NEATは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防・改善にも効果的です。
身体活動量を増やすことで、
血糖値や血圧が安定し、悪玉コレステロールが減少し、善玉コレステロールが増加します。
これらの生活習慣病は、動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中などの重篤な疾患に繋がる可能性があります。
NEATを高めることは、これらのリスクを軽減し、健康寿命を延ばすために非常に重要です。 - 認知機能の維持・向上
近年、NEATが認知機能にも良い影響を与えることが分かってきました。
身体活動量を増やすことで、脳への血流が増加し、神経細胞の活性化を促すことで、
記憶力や注意力、判断力などの認知機能が維持・向上すると考えられています。
認知症予防のためには、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に加え、NEATを高めることも重要です。 - 精神的な安定
NEATは、精神的な安定にも繋がります。
身体活動量を増やすことで、
セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、幸福感や高揚感をもたらします。
また、
ストレスや不安を軽減する効果も期待できます。
さらに、
仲間と一緒に活動することで、コミュニケーションが生まれ、孤独感を解消できる場合もあります。 - 睡眠の質の向上
適度な身体活動は、睡眠の質を向上させる効果も期待できます。
NEATを高めることで、日中の活動量が増え、夜には自然な眠気が訪れるようになります。
また、
深い睡眠が得られるようになり、疲労回復や心身のリフレッシュに繋がります。
高齢者のNEATを高めるための工夫
高齢者のNEATを高めるためには、日常生活の中で様々な工夫をすることができます。
- 積極的に動く
- 家事や庭仕事を積極的に行う
- 階段を使うようにする
- 近距離であれば、車やバスではなく、徒歩や自転車を利用する
- 趣味活動や地域活動に参加する
- ペットの散歩をする
- 座る時間を減らす
- テレビを見る時間を減らす
- デスクワーク中は、こまめに休憩を取り、体を動かす
- 立って作業をする時間を増やす
- 日常生活動作を意識する
- 姿勢を正して歩く
- 荷物を持つ際に、少し重いものを持つようにする
- 椅子に座る際に、深く腰掛けるようにする
NEATを高める際の注意点
高齢者がNEATを高める際は、以下の点に注意する必要があります。
- 体調に合わせた活動
体調が悪い場合は、無理せず休むようにしましょう。 - 準備運動と整理運動
活動前後のストレッチは、怪我予防に繋がります。 - 水分補給
活動中は、こまめに水分を補給しましょう。 - 転倒予防
足元に注意し、滑りやすい場所での活動は避けましょう。 - 持病がある場合は医師に相談
持病がある場合は、活動の種類や強度について医師に相談しましょう。
まとめ
NEATは、高齢者のQOL向上に不可欠な要素です。
身体機能の維持・向上、生活習慣病の予防・改善、認知機能の維持・向上、精神的な安定、
睡眠の質の向上など、様々な効果が期待できます。
健康寿命を延ばし、質の高い生活を送るために、今日からできることから始めてみましょう。
参考文献・サイト
- 厚生労働省 健康日本21(第二次):https://rctportal.niph.go.jp/en/detail?trial_id=UMIN000044128
- 国立長寿医療研究センター:https://www.ncgg.go.jp/english/
- 非運動性熱産生(NEAT)とは | 健康長寿ネット: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9111508/
- 「NEAT」って知っていますか?~健康づくりのカギは運動以外の身体活動 | みどり訪問看護ステーション: https://midori-hp.or.jp/category/visitingnurse-midori-blog/page/2/
- 高齢者のQOL(生活の質)とは?維持・向上させるポイントも紹介 | 株式会社ケアマイスター: https://www.qhms.com/en/services/health-screening/elderly-health
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