信頼関係を築く対人援助の極意!介護に活かすバイステックの7原則

高齢者の方々への介護は単なる身体的なサポートだけではありません

心のケア、
つまり対人援助が非常に重要になります

信頼関係を築き、
安心して過ごせる環境を提供することで、
高齢者のQOL(生活の質)は大きく向上します

その対人援助において長年にわたり多くの専門家に指針を与えてきたのが、
ソーシャルワークの基本原則である「バイステックの7原則」です

この原則を理解し、
日々の介護に取り入れることで、
高齢者とのより良い関係性を築き、
質の高い支援を提供することが可能になります

この記事では、
高齢者への対人援助において、
バイステックの7原則がどのように効果を発揮するのか、
具体的な事例を交えながら解説します!

1.なぜバイステックの7原則が高齢者の対人援助に重要なのか

高齢者の方々は、
加齢に伴う身体機能の低下や、病気、孤独、経済的な不安など、
様々な困難に直面している場合があります

そのような状況において、
介護者は単なる世話役ではなく、高齢者の気持ちに寄り添い、
安心感を提供できる存在であることが求められます

バイステックの7原則は、
援助者(介護者)が利用者(高齢者)との間に信頼関係を築き、
その人らしい生活を尊重するための基本的な考え方を示しています

この原則を意識することで、
高齢者は安心して自分の気持ちを表現でき、
介護者はより的確な支援を提供できるようになるのです

結果として、高齢者のQOL向上に大きく貢献します

2.高齢者の対人援助に活かすバイステックの7原則【介護の現場で実践】

ここからは、
バイステックの7原則を1つずつ解説し、
高齢者の介護現場でどのように活かせるのかを解説していきます

2-1. 個別化の原則:一人ひとりの違いを理解し、尊重する

高齢者に限らず人は、それぞれ異なる
人生経験、価値観、個性を持っています

介護者は、画一的な対応ではなく、
一人ひとりの個性やニーズを理解し、
それを尊重して個別化された援助を行う必要があります

介護現場での実践例:

  • 初めて出会う高齢者には、丁寧に自己紹介をし、
    趣味や興味、大切にしていることなどを時間をかけて尋ねる。
  • 過去の職業や経験などを聞き、その人の歴史を理解しようと努める。
  • その日の体調や気分を観察し、声かけや介助の方法を調整する。

2-2. 意図的な感情表出の原則:気持ちを受け止め、共感する

高齢者は、様々な感情を抱えています

喜びや楽しみだけでなく、
不安や悲しみ、怒りなどを表すこともあります

介護者は、
それらの感情を否定したり無視したりするのではなく、
意図的に受け止め共感する姿勢が重要です。

介護現場での実践例:

  • 高齢者が不安な気持ちを訴えた際には、
    「そうですね、ご心配ですよね」と共感の言葉を伝える。
  • 悲しい出来事を話された際には、静かに耳を傾け、
    必要であれば 手を添えるなど、安心感を提供する。
  • 怒りの感情を表出した際には、頭ごなしに否定するのではなく、
    「何かあったんですね」と受け止め、話を聞く。

2-3. 受容の原則:ありのままの高齢者を受け入れる

高齢者の外見、性格、言動、過去の行いなど、
良い面もそうでない面も含めて、
ありのままを受け入れることが大切です

偏見や先入観を持たずに接することで、
高齢者は安心して自分自身を開示することができます

介護現場での実践例:

  • 認知症による見当識障害や徘徊などの症状があっても、
    頭ごなしに叱るのではなく、その行動の背景にある気持ちを理解しようと努める
  • 過去に問題行動があったとしても、
    現在のその人自身を尊重し、否定的な言葉を使わない
  • 個人の尊厳を損なうような言動は慎む

2-4. 非審判的な態度の原則:価値判断をせず、中立的な立場で接する

介護者は高齢者の行動や意見に対して、
自分の価値観で判断したり、批判したりするのではなく、
非審判的な態度で接する必要があります

中立的な立場で話を聞き、
高齢者自身が解決策を見つけられるようサポートします

介護現場での実践例:

  • 高齢者の選択や意見が自分の考えと異なる場合でも、
    すぐに否定せずに、「そうお考えなのですね」と受け止める
  • 過去の生活習慣や価値観について、批判的な意見を述べない
  • 高齢者自身が意思決定できるよう、情報提供や選択肢の提示を行う

2-5. 利用者の自己決定の原則:自分で決めることを尊重する

高齢者が自分の生活に関わることについて、
できる限り自分で決定できるよう支援することが重要です

介護者は、
情報提供や選択肢の提示を行い、高齢者の意思を尊重します

介護現場での実践例:

  • 食事のメニューや入浴の時間など、
    可能な範囲で高齢者の希望を聞き、尊重する
  • 介護サービスの利用計画を作成する際には、
    高齢者本人の意向を十分に確認する
  • 判断能力が低下している場合でも、
    本人の過去の意思や価値観を考慮する

2-6. 秘密保持の原則:プライバシーを守り、信頼関係を築く

高齢者から得た個人情報やプライバシーに関わる情報は、
秘密を保持する必要があります

信頼関係は、安心してお話できる環境があってこそ築かれます

介護現場での実践例:

  • 高齢者の病状や家族関係などの個人的な情報を、
    関係のない人に話さない
  • 排泄や入浴の介助など、プライバシーに配慮が必要な場面では、
    声かけをしっかりと行い、羞恥心に配慮する
  • 記録や申し送りなどを行う際にも、個人情報保護の意識を持つ

2-7. 援助者自身の感情統制の原則:プロとしての自覚を持つ

介護者は高齢者との関わりの中で、
自身の感情に振り回されることなく、
感情統制を行う必要があります

平穏な態度で、
冷静かつ客観的に高齢者をサポートすることが求められます

介護現場での実践例:

  • 高齢者の言動にイライラしたり、感情的になったりした場合でも、
    すぐに反応 するのではなく、冷静さを保つ
  • 困難な状況に直面した際には、
    一人で抱え込まずに、同僚や上司に相談する
  • 自身のストレスを適切に管理し、 平穏な態度を維持する

3.バイステックの7原則を実践するためのポイント【高齢者とのより良い関係へ】

バイステックの7原則を効果的に実践するためには、
以下の点を意識することが大切です

  • 常に意識する
    日々の介護の中で、7つの原則を意識し続けることが重要
  • 振り返りを行う
    自分の言動を振り返り、原則に沿った対応ができていたか振り返る習慣を持つ
  • チームで共有する
    職場の同僚や家族と原則について話し合い、共通理解を深める
  • 研修などを活用する
    対人援助に関する研修などを積極的に受講し、知識やスキルを向上させる

4.まとめ:バイステックの7原則で高齢者との信頼関係を深め、QOL向上を

バイステックの7原則は、
高齢者との対人援助において、信頼関係を築き、
質の高い介護を提供するための重要な指針です

この原則を理解し、日々のケアに活かすことで、
高齢者は安心して自分らしく生活を送ることができ、
結果としてQOLの向上につながります

介護に携わる全ての方が、バイステックの7原則を心に留め、
高齢者一人ひとりに寄り添った温かい支援を実践していくことが、
これからの高齢化社会においてますます重要となります

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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