高齢者の笑顔を支える!介護専門職ができる「社会的処方」実践ガイド

高齢者の方々のQOL(生活の質)向上は、
私たち介護職にとって最も重要な使命の一つです

身体的なケアはもちろんのこと、
心の健康を育む『社会的処方』の視点を持つことで、
より包括的なサポートが可能になります

この記事では、
高齢者の人生を豊かにするために、
介護職をはじめとする支援者が実践できる
具体的な「社会的処方」の方法を解説します

専門的な知識やスキルに頼るだけでなく、
地域との繋がりや役割づくりを支援することで、
高齢者の笑顔を咲かせましょう!

1.介護現場こそ「社会的処方」が光を放つ理由

高齢者の方々は、
役割や記憶、親せき・友人などの喪失感に加え、
孤独や社会からの孤立を感じやすい状況にあります

私たち介護職は、
高齢者に深く関わるからこそ、
「社会的処方」の考え方をプログラムに取り入れ、
心のケアにも目を向けることが重要になります

運動(リハビリ)や入浴介助などだけでは満たされない、
高齢者の「 社会的ニーズ」に応えることで、
意欲や興味関心を引き出し、
QOLの向上に繋げることができます

2.介護職が実践する具体的なアプローチ

それでは、
介護の現場で私たち支援者が実践できる具体的な
「社会的処方」のアプローチを考えていきましょう

2-1. コミュニケーションの質を高める:傾聴と共感で心のドアを開く

  • 傾聴のスキルを磨く
    高齢者の言葉にしっかりと耳を傾け、
    目を見て、相槌を打ちながら聞く姿勢を示しましょう

    話の内容だけでなく、
    表情や声のトーンから感情を読み取ることも大切です
  • 共感の言葉を効果的に使う
    「つらいですね」
    「寂しいですね」
    といった共感の言葉は、
    高齢者の気持ちを受け止め、安心感を与えます
  • オープンとクローズドな質問を使い分ける
    「何か困っていることはありませんか?」
    「今日は何かしたいことはありますか?」など、
    はい・いいえ だけでは答えられない質問をして
    高齢者が自分のことを話せるきっかけを作ることができます

    しかし、
    上手く自分のことを話せない(思い出せない)方もいらっしゃいます

    そのような場合は、
    「体調はどうですか?」
    「痛いところはありますか?」 など
    はい・いいえ などで答えられる質問に切り替えることで
    高齢者の負担を軽減することができます
  • 昔の話を聞く時間を設ける
    回想法を活用し、
    高齢者の経験や思い出を共有することで、
    自己肯定感を高め、信頼関係を深めます

    忙しい時間のなかでも
    ゆっくりと話を聞く時間を作ることが大切です!

2-2. 役割と参加を促す:できることを尊重する

  • 施設内での役割づくり
    食事の配膳、
    テーブルセットの準備
    ペットの世話など
    高齢者が無理なくできる範囲で役割をお願いしてみましょう

    ありがとう

    の感謝の言葉は、意欲向上に繋がります
  • 地域活動への参加を促す
    高齢者の興味関心や能力に合った地域活動やイベントを紹介し、
    参加をサポートします

    また
    施設に地域の方々を招待し
    演奏会や麻雀などの相手、生け花教室など
    地域の方々との接点を作る機会を提供することも大切です
  • 社会参加に繋がる目標設定を支援する
    運動プログラムや機能訓練(リハビリ)において、
    日常生活における目標
    (「食堂まで歩いて行く」「 イベントに参加する」「桜を見に行く」など)
    を設定し、達成感を味わえるように支援します

2-3. 社会との繋がりを サポートする:孤立感を軽減させる

  • 家族との連絡をサポートする
    電話やスマホの使い方を教たり、
    手紙の代筆をしたりするなど、
    高齢者と家族との繋がりが保たれるように支援します
  • 他の利用者との会話を促す
    レクリエーションや共同作業などを通して、
    他の利用者との交流の機会を積極的に作りましょう!

    ペアワークやグループワークを取り入れるのも有効です
  • 地域住民との交流イベントを企画する
    地域の子供たちとの交流会や、
    近隣住民を招いたイベントなどを企画し、
    高齢者が社会との繋がりを感じられる機会を提供します

2-4. 新しい趣味や楽しみを発見する:知的好奇心を刺激する

  • 認知機能活性化プログラムを提供する
    音楽療法、 アートセラピー、園芸療法、回想法など、
    多様なプログラムを提供し、高齢者の知的好奇心を刺激します
  • 学習機会を提供する
    新聞を読む、 パズルやクイズをする、
    簡単な語学を学ぶなど、
    高齢者が知的好奇心を満たせるような機会を提供します
  • テクノロジーを活用する
    タブレットやスマホアプリなどの使い方を教え、
    新しいコミュニケーションの形を提供します

2-5. 外出の機会を提供する:外出機会と適度な運動の推奨

  • 散歩や外出の機会を作る
    天気の良い日には、近所の散歩に付き添ったり、
    買い物に同行したりするなど、
    外出の機会を一緒に作りましょう
  • 施設内での適度な運動を促す
    椅子に座ってできる体操や、
    音楽に合わせたリズム運動など、
    高齢者の体力に合わせた運動を取り入れましょう
  • 専門家との連携
    ケアマネジャーや医師、看護師、リハビリ職、介護職
    他施設のスタッフなどと連携し、
    包括的にプログラムを作成・実施することも重要です

3.「社会的処方」を実践する上でのポイント

  • チーム一丸で取り組む
    医師、看護師、ケアマネージャー、家族など、
    包括的なチームで情報を共有し、連携しながら
    「社会的処方」を実践することが重要です
  • 潜在的なニーズを把握する
    高齢者一人ひとりの 人生、価値観、興味関心などを把握し、
    潜在的なニーズを発見するようなアプローチを心がけましょう
  • 小さなステップから始める
    最初から大きなことをするのではなく、
    できることから少しずつ始めることが、継続への鍵となります
  • 効果を測定し、分析する
    定期的に高齢者の様子を観察し、
    取り組みの効果を評価し、
    必要に応じてアプローチを改善していきましょう

4.まとめ:社会の力で高齢者の QOL を向上させる

私たち介護職は、
身体的なケアのスペシャリストであると同時に、
高齢者の心に寄り添う支援者でもあります

「社会的処方」の視点を持つことで、
家族や医師などのサポートだけでは届かない、
心の領域に寄り添うことができます

高齢者一人ひとりの人生や価値観、興味関心を尊重し、
地域社会との繋がりを育むことで、
笑顔と生きがいを引き出すことができます!

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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