「どうして私ばかりが介護しなくちゃいけないの?」と感じたら

どうして私ばかりが介護しなくちゃいけないの?

―仕事、子育て、家事…と、
自分の生活で手一杯な中で、
や家族の介護が突然、
あるいは徐々にのしかかってきた時、
そう感じてしまうのは、ごく自然なことです。

罪悪感を覚える必要はありません。

その感情は、
あなたが既に抱えている負担の重さ、
そして今後の生活への不安の表れだからです。

このブログは、
どうして私が介護しなくちゃいけないの?」と
心の中で叫んでいるあなたのために書きました。

決して一人で抱え込む必要はありません。

現状を打開し、
あなた自身の生活と心を守るための介護サービスの賢い活用法について、
具体的なステップをお伝えします。


1. その感情は「SOS」:自分を責めないで

「私が介護すべきなのに、こんなこと思うなんて…」と、
自分を責めていませんか?

しかし、この感情は、
あなた自身の心身が限界に近づいている「SOS」サインです。

介護は長期戦であり、
一人で全てを背負い込むことは不可能です。

共倒れになってしまっては、誰も幸せになりません。

大切なのは、
その感情を否定せず、現状を冷静に見つめ、
どうすればこの状況を打開できるかを考えることです。

そして、
その大きな鍵となるのが、介護サービスの適切な活用です。


2. 「なぜ私が?」から「どうすれば?」へ:介護サービスの活用を考える

介護サービスは、
単なる「介護の代行」ではありません。

それは、
あなたが介護と自分の生活を「両立」させるための、
強力な味方です。

2-1. 介護サービス活用のメリット:自分と家族を守るために

介護サービスを活用することは、
あなただけでなく、高齢者である
そして家族全体のQOL(生活の質)向上に繋がります。

  • 介護負担の軽減
    当然ですが、
    介護に関わる身体的・精神的な負担が大幅に軽減されます。

    例えば、
    入浴介助や排泄介助など、
    専門的な知識や体力が必要な部分をプロに任せることで、
    あなたの負担は格段に軽くなります。
  • 自分の時間・心身の余裕の確保
    介護から解放される時間が生まれることで、
    仕事に集中したり、休息を取ったり、
    趣味の時間を楽しんだりする余裕ができます。

    この余裕が、
    あなたの心身の健康を保つために不可欠です。
  • 専門的な視点からのケア
    介護の専門家は、
    高齢者の身体状況や認知症の症状に合わせた適切なケアを提供します。

    これは、
    家族介護では気づきにくい細かなニーズに応え、
    QOLを向上させることにも繋がります。
  • 家庭内の関係改善
    介護によるストレスは、
    家族関係に亀裂を生じさせることが少なくありません。

    専門サービスを利用することで、
    との関係が「介護する・される」関係だけでなく、
    子」としての穏やかな関係に戻るきっかけになることもあります。
  • 安心感の獲得
    専門家が関わることで、
    「何かあった時にどうしよう」という漠然とした不安が軽減され、
    精神的な安心感を得られます。

3. 具体的な打開策:介護サービスの賢い活用ステップ

では、
具体的にどのように介護サービス
活用していけば良いのでしょうか。

ステップ1:現状のSOSを具体的に言語化する

まず、
どうして私が介護しなくちゃいけないの?」と
感じる具体的な理由を書き出してみましょう。

  • 「毎日の食事作りが負担…」
  • 「夜中に何度も起こされて眠れない…」
  • 「休日に自分の時間が全く取れない…」
  • 認知症の症状で会話が成り立たず、精神的に疲弊する…」
  • 「仕事の会議中にからの電話で集中できない…」

これらを言語化することで、
どの部分の介護を、どのようなサービスで補いたいのか、
具体的なニーズが見えてきます。

ステップ2:迷わず「地域包括支援センター」に連絡する

以前のブログでもお伝えしましたが、
ここが最も重要な第一歩です。

  • 地域包括支援センターの役割
    高齢者に関するあらゆる相談に乗ってくれる総合窓口です。

    介護保険制度の利用相談から、
    具体的なサービスの案内、医療機関との連携、
    地域の高齢者支援情報まで、専門家が無料で対応してくれます。
  • 「私」がしんどい、と伝えていい
    遠慮なく、
    介護が大変で、私自身が困っている」
    「仕事との両立が難しく、どうしたらいいか分からない」と、
    あなたの状況を率直に伝えましょう。

    彼らはそのための専門家です。


    実際に 「どうして私が介護しなくちゃいけないの? もう限界!」
    と涙ながらに地域包括支援センターに相談をされた方が
    「おツラかったですね。よくご連絡くださいました」
    という担当者の温かい言葉に救われたそうです。

    その後、
    担当者が親御さんの状況を丁寧にヒアリングし、
    まずは介護保険の申請をサポート。

    そして、
    週に数回ヘルパーが来てくれる訪問介護と、
    日中の時間帯にが趣味の活動もできるデイサービスの利用を
    提案してくれました。

    これにより、
    日中の仕事に集中できる時間を取り戻し、
    趣味の時間も持てるようになりました。

    サービスを利用する前は、
    毎日が介護で埋め尽くされていましたが、
    今は自分を取り戻せています」と語っています。

    また、ご利用者様も
    子どもやお嫁さんが忙しいのをわかっているから
    自分でも何かをしたいけど上手くできなくて
    イライラしてしまっていました。

    しかし、
    介護サービスを利用するようになってからは
    リハビリ(個別機能訓練など)を行い
    できることが増えました。

    また、
    程より距離感を保つことができるようになったため
    お互いに優しく接することができるようになりました。

    っというお声は1つや2つではありません。

ステップ3:介護保険サービスを「徹底的に」活用する

介護認定を受けたら、
いよいよ介護保険サービスを具体的に活用するフェーズです。

  • ケアマネジャーと相談する
    ケアマネジャーは、
    の状態とあなたの希望を踏まえてケアプランを作成してくれる専門家です。

    あなたの仕事の状況、介護で特に負担に感じていること、
    休みたい時間帯など、詳細な情報を伝え、
    あなた自身のニーズもケアプランに反映してもらいましょう。

    • 「週に一度、丸一日介護から離れる時間が欲しい」
      「夜間の見守りが不安なので、定期的にショートステイを利用したい」
      などの要望でも大丈夫です。

      具体的に要望を伝えましょう。
  • サービスの選択肢を知る
    • 訪問介護 …食事、入浴、排泄など、身体介護や生活援助を自宅で提供。
    • 通所介護(デイサービス)…日中に施設でレクリエーションや入浴、食事などを提供。
    • 短期入所生活介護(ショートステイ)…短期間施設に宿泊し、介護を受ける。あなたが休養を取るために非常に有効です。
    • 福祉用具貸与:…車いすや介護ベッドなど、生活を助ける用具のレンタル。
    • 施設サービス:…自宅での介護が困難になった場合の選択肢。
    • ポイント
      これらはごく一部です。

      地域には様々なサービスがあり、
      組み合わせて利用することで、あなたの負担を大きく減らせます。

      ケアマネジャーに遠慮なく相談しましょう。

ステップ4:介護保険外サービスや地域資源も視野に入れる

介護保険サービスだけでは対応しきれない部分や、
より手厚いケアを望む場合は、保険外サービスも検討しましょう。

  • 民間サービス
    家事代行、見守りサービス、配食サービス、
    プライベートな介護サービスなど、
    介護保険では賄えない部分を柔軟に補えます。

    費用はかかりますが、
    あなたの精神的な負担を考えると有効な手段になることもあります。
  • 地域のNPOやボランティア
    地域によっては、高齢者の見守りや話し相手、
    ちょっとした困りごとを助けてくれるボランティア団体やNPOがあります。

    費用が安価だったり、無料で利用できる場合もあります。

4. 「私」という中心軸を保つ:心構えと未来への投資

介護は長期戦です。

あなた自身の心と体を壊してしまっては、
を支え続けることはできません。

  • 完璧を目指さない
    全てを完璧にこなそうとすると、
    心が折れてしまいます。

    時には「これで十分」と割り切る勇気も必要です。
  • 休むことへの罪悪感を持たない
    あなたがリフレッシュすることは、
    を支え続けるための大切な「充電」です。

    休むことに罪悪感を持つ必要は全くありません。
  • 情報を共有する「チーム」を持つ
    兄弟姉妹、配偶者、職場の上司、ケアマネジャーなど、
    あなたが信頼できる「チーム」を作り、
    介護の状況や困りごとを共有しましょう。

    一人で抱え込まず、
    頼れる人に頼ることが、介護を「両立」させる秘訣です。

まとめ:「どうして私が?」から「どうすれば!」へ

どうして私が介護しなくちゃいけないの?」という感情は、
あなたが介護の重圧を感じている証拠です。

その感情を否定するのではなく、
介護サービスを賢く活用するための出発点と捉えましょう。

地域包括支援センターへの連絡、
介護保険の申請、ケアマネジャーとの密な連携、
そして多様なサービスの活用。

これらのステップを踏むことで、
あなたは介護という重責から解放され、
仕事との「両立」を図りながら、自分自身のQOLを守り、
豊かな人生を歩むことができるはずです。

一人で抱え込まず、助けを求めること。

それが、
介護を乗り越えるための最初の、そして最も重要な一歩です。


この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

COMMENT

コメントする

目次