親の介護に備える!事前に家族で話し合うべき5つのこと

介護

—この言葉を聞くと、
漠然とした不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

まだ元気な介護について話すのは気が引ける、
何を話し合えばいいのか分からない、

そう考えるのは自然なことです。

しかし、

介護が必要になったその時、
家族がバラバラの認識では、混乱や対立が生じ、
もあなた自身も辛い思いをすることになりかねません。

今回のブログは、
が元気なうちに介護に備えて家族で話し合うべき
重要な5つのことについて、具体的なポイントと、
話し合いを円滑に進めるためのヒントをお届けします。

早めに準備を始めることで、

も家族も納得のいく、後悔のない介護を実現できるはずです。


1. なぜ「今」話し合うべきなのか? 未然に防ぐ「介護クライシス」

多くの家族が介護の話し合いを後回しにしてしまうのは、
以下のような理由からです。

  • 「まだ元気だから大丈夫」という思い込み
    が元気なうちは、介護は遠い未来の話だと感じがちです。

    しかし、
    介護は突然、予期せぬ形で必要になることがあります。
  • 「縁起でもない」という気持ち
    の老いや病気について話すことに
    抵抗を感じる人も少なくありません。
  • 「誰かが何とかしてくれるだろう」という他人任せ
    兄弟姉妹間で互いに任せきりにしてしまい、
    いざという時に責任の押し付け合いになるケースもあります。
  • 忙しさ
    日々の仕事や生活に追われ、
    時間を作るのが難しいと感じる方もいるでしょう。

しかし、
これらの理由で話し合いを先延ばしにすると、
以下のような「介護クライシス」に直面する可能性があります。

  • 突然の出来事への対応の遅れ
    予期せぬ事故や急病で介護が必要になった際、
    情報共有や役割分担ができていないと、初期対応が後手に回ります。
  • 家族間の意見対立
    介護方針(自宅で看るか、施設に入れるか)、
    費用負担、誰が主になって介護するかなどで意見が食い違い、
    家族関係に亀裂が入ることがあります。
  • 経済的・精神的負担の増大
    十分な準備ができていないために、
    想定外の費用がかかったり、
    特定の人に介護負担が集中し、心身を病んでしまうリスクが高まります。

「今」話し合うことは、
未来の「危機」を回避し、
と家族のQOL(生活の質)を守るために
遅すぎることはあっても
早すぎることはありません!


2. 事前に家族で話し合うべき5つのこと

では、
具体的に何を話し合えばいいのでしょうか。

以下に、5つの重要なテーマを挙げます。

2-1. 親の「意思」と「希望」:どう暮らしたいか?

最も大切なのは、親自身の意思です。

が元気なうちに、
介護が必要になったら「どうしたいか」を
直接聞いておくことが、後悔しない介護の第一歩です。

  • どこで暮らしたいか?
    • 住み慣れた自宅で暮らし続けたいのか、
      それとも施設への入居も考えているのか。
    • 「私はこの家で死ぬまで暮らしたい」
      と強く希望していたに対し、
      家族は施設入居を考えていたというケースは少なくありません。

      事前にこの希望を聞いていれば、
      自宅での介護を支えるための情報収集や
      環境整備を早くから検討できます。
  • どのような介護を受けたいか?
    • どこまで手助けしてほしいか
      (例えば、入浴や排泄はどこまで任せたいか)
    • 訪問介護は利用したいか、
      デイサービスには通いたいか。
  • どのような医療を受けたいか?
    • 延命治療についてどう考えているか、
      最期をどこで迎えたいか(自宅、病院、施設など)

      これは
      「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)」
      として公的な場でも推奨されています。

話し合いのヒント

「もしもの話」としてではなく、
「親の人生の最期を豊かにするため」という視点で、
優しく問いかけましょう。

すぐに答えが出なくても、
時間をかけて何度も話し合う姿勢が大切です。

2-2. 家族の「役割分担」:誰が、何を、どこまで担うか?

複数の兄弟姉妹がいる場合、
この役割分担が不明確だとトラブルの元になりがちです。

  • 誰がキーパーソンになるか?
    • 介護サービスや医療機関との連絡、
      家族間の情報共有の中心となる
      キーパーソン」を決めておきましょう。

      必ずしもと同居している人がなる必要はありません。
  • それぞれの役割を明確にする
    • 日常的な介護の分担(食事の準備、病院への付き添い、買い物など)。
    • 金銭管理や手続きの担当。
    • 定期的な見守りや声かけの担当。
    • 介護は物理的に難しいが、情報収集や相談相手にはなれる」など、

      それぞれの得意なことや可能な範囲で役割を明確にすることが重要です。

話し合いのヒント

正直に「何ができるか、何が難しいか」を伝え合いましょう。

完璧を目指さず、お互いの事情を理解し、協力し合う姿勢が肝心です。

2-3. 「費用の分担」と「資産状況」:誰が、どう賄うか?

介護には想像以上にお金がかかります。

金銭的な問題は、
家族間の対立の最大の原因の一つになりがちです。

  • 親の資産状況を確認する
    • 預貯金、年金収入、不動産、保険など、
      がどの程度の資産を持っているのかを把握しておきましょう。
    • 親の貯金が十分にあると思っていたが、
      実際は年金だけでは生活費が不足し、
      毎月赤字になっていることが判明といったケースもあります。
  • 介護費用の試算と分担方法
    • 介護保険サービスを利用した場合の自己負担額、
      おむつ代や食費などの実費、
      施設入居の場合の費用などを試算してみましょう。
    • その費用をの貯金で賄うのか、
      子どもたちがどのように分担するのかを具体的に話し合っておきます。
    • ポイント:
      口約束ではなく、
      可能であれば書面に残しておくことで、
      後のトラブルを避けることができます。

話し合いのヒント

最もデリケートな部分ですが、避けては通れません。

感情的にならず、
冷静に数字を提示しながら話し合うことが大切です。

2-4. 「仕事との両立」の可能性:使える制度や職場の理解

仕事をしている現役世代にとって
介護と仕事の「両立」は大きな課題です。

早めに職場の制度を確認し、家族と共有しておきましょう。

  • 勤務先の介護に関する制度を確認する
    • 介護休業、介護休暇、短時間勤務、
      フレックスタイム制など、
      どのような制度があるのかを人事担当部署に確認しましょう。
  • 職場への情報共有のタイミング
    • の状況を上司や人事担当者にいつ、
      どの程度伝えるか、家族で方針を共有しておきましょう。

話し合いのヒント

自分の職場だけでなく、
兄弟姉妹それぞれの職場の制度も確認し、
最も柔軟に対応できる人が一時的に介護の負担を多く担うなど、
連携を視野に入れて話し合いましょう。

2-5. 「緊急時」の連絡体制と対応:誰が、どう動くか?

予期せぬ事態が発生した際の
連絡体制と対応策を事前に決めておくことは、
冷静な判断と迅速な行動のために不可欠です。

  • 緊急連絡先リストの作成
    • の緊急連絡先
      (かかりつけ医、地域包括支援センター、近所の友人など)
      をリストアップし、家族全員で共有しておきましょう。
    • 夜中にが倒れたという連絡を受け、
      慌てて病院に駆けつけるも、医師から病状説明を受ける際に、
      の既往歴や服用している薬が分からず、
      家族全員で情報を探し回ったというケースもあります。
  • 緊急時の役割分担
    • 誰が救急車を呼ぶのか、誰が病院に付き添うのか、
      誰が他の家族に連絡するのかなど、
      具体的な役割を決めておきましょう。
  • 鍵の共有や見守り体制
    • 緊急時に自宅に入れるよう、合鍵の共有や、
      離れて暮らす場合の安否確認の方法
      (見守りシステム、近所への声かけ依頼など)も検討しましょう。

話し合いのヒント

実際に緊急事態を想定して、
シミュレーションしてみるのも有効です。

年に一度は、
緊急連絡先リストを見直す機会を設けましょう。


まとめ:親の「もしも」に備える、家族の「チーム力」

介護は、
家族全員で取り組むべき「プロジェクト」です。

が元気なうちにこれらの5つのテーマについて事前に話し合うことは、
未来の「介護クライシス」を防ぎ、親のQOLを守り、

そして何よりも、
あなた自身を含む家族全員が後悔のない選択をするための、
重要な「心の準備」となります。

すぐに完璧な答えが出なくても構いません。

大切なのは、家族全員が介護を「自分事」として捉え、
お互いの意見を尊重しながら、
少しずつでも対話を重ねることです。

この話し合いを通じて育まれる家族の「チーム力」こそが、
親の介護という大きな課題を乗り越えるための、
何よりの力となります!

「まだ早いかな」
「きっとうちは大丈夫」
と思う気持ちもわかりますが、
家族が集まった機会などに
話題を挙げてみてほしいと思います。


この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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