今年の土用は何を食べる?

季節の変わり目って
体調を崩すことが多くないですか?

この季節の変わり目に、
東洋医学では特に重要な期間とされているのが「土用(どよう)」です。

土用と聞くと
「土用の丑の日」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
実は年に4回あり、
各季節の変わり目に約18日間ずつ設けられています。

特に、
夏の土用(立秋の約18日前から当日まで)は、
湿気と暑さが厳しさを増す時期。

この時期に体調を崩しやすい高齢者の方々にとって、
東洋医学の「養生法」を取り入れることは、
健やかに過ごすための大きな助けとなります。

体力の低下を感じやすい高齢者の皆さんが、
この土用の時期を乗り越え、
次の季節に向けて心身を整えるための具体的な養生法を解説します。


1. 東洋医学における「土用」とは?

東洋医学では、自然界のあらゆるものを
「木・火・土・金・水」の五つの要素(五行)に分類する
「五行思想」があります。

このうち「土」の要素は、
季節の変わり目、
特に各季節の終わりにあたる約18日間が該当します。

  • 「土」の役割
    「土」は、安定、調和、そして「生み出す・育む」力
    を象徴します。

    季節の変わり目である土用の時期は、
    前の季節の気(エネルギー)が
    次の季節へとスムーズに移行するための
    準備期間と考えられています。
  • 身体への影響
    東洋医学では、「土」は脾臓と胃、消化器系と
    深く関連しているとされます。

    このため、
    土用の時期は、消化器系の機能が不安定になりやすく、
    体調を崩しやすいとされています。

    特に夏の土用は、
    湿気と暑さが加わるため、
    食欲不振や消化不良、倦怠感などが現れやすくなります。
  • 高齢者への影響
    若い世代よりも消化器系の機能が衰えやすい高齢者にとって、
    土用の時期の体調変化はより顕著に出やすく、
    疲れやすさや食欲不振が深刻になることがあります。

2. 高齢者が土用に実践したい養生法:心と体を整える知恵

土用の時期に特に意識したいのは、
消化器のケア」「水分代謝の調整」「心の安定」です。

以下に具体的な養生法を解説します。

2-1. 消化器系を労わる「食養生」

土用は脾胃(消化器系)に負担がかかりやすい時期です。

消化に良いものを中心に、体を労わる食事を心がけましょう。

  • 消化の良いものを摂る
    • 油っこいもの、生もの、冷たいもの
      の摂りすぎは避けましょう。

      胃腸に負担をかけやすいので、
      温かく消化しやすいものを中心にしてください。
    • 例: おかゆ、雑炊、うどん、煮込み料理、温野菜などがおすすめです。
  • 旬の食材を取り入れる
    • 夏の土用には、体を冷ます作用や、
      体内の余分な湿気を排出する作用を持つ
      旬の野菜・果物が豊富です。

      これらをバランス良く取り入れましょう。
    • 例: トマト、キュウリ、ナス、冬瓜(とうがん)、ゴーヤ、スイカなど。
      特に冬瓜は、体の余分な熱と湿気を取る効果が高いとされます。
  • 「気」を補う食材
    • 湿気でだるさや倦怠感が出やすい時期なので、
      体のエネルギー(気)を補い、
      胃腸を元気にする食材も取り入れましょう。
    • 例: 鶏肉、うなぎ、山芋、かぼちゃ、豆類(大豆、小豆など)。
      特にうなぎは、滋養強壮に良いとされ、
      夏の土用の丑の日に食べる習慣にもつながっています。
  • 香りの良い食材で食欲増進
    • 食欲不振になりやすい時期なので、
      食欲を刺激する香りの良い薬味やハーブを活用しましょう。
    • 例: シソ、ミョウガ、生姜、ネギ、セロリなど。

2-2. 湿気と熱から体を守る「生活養生」

体内に湿気や熱がこもらないように、
日々の生活習慣を見直しましょう。

  • 適度な発汗と除湿
    • 体内の湿気を排出するために、
      適度な発汗を促しましょう。

      軽い運動や、ぬるめの湯船にゆっくり浸かる入浴が効果的です。
    • 室内の対策
      エアコンや除湿器を活用し、湿度を適切に保ちましょう。
      ジメジメした環境は、体の不調だけでなくカビの発生にもつながります。
  • 体を冷やしすぎない
    • 暑いからといって、冷たいものを摂りすぎたり、
      過度に体を冷やしすぎたりすると、胃腸の働きを弱めます。
    • 例: 冷たい飲み物ばかりでなく、常温の水やお茶を飲む。

      就寝時にはお腹にタオルケットをかけるなどして冷えから守りましょう。
  • 衣類で調整
    • 吸湿性・通気性の良い素材の服を選び、
      体を締め付けないゆったりとした服装にしましょう。

      肌寒い時には羽織れるものを用意し、
      体温調節をこまめに行ってください。
  • 「土いじり」は控える日も
    • 昔から土用の期間は土をいじることを控える
      「土を動かすな」という風習があります。

      これは土の気が不安定な時期に、
      無闇に土を動かすことで体調を崩すことを避けるためとも言われています。

      体力が低下しやすい高齢者は、
      特に大きな土木作業やガーデニング作業は控えめにし、
      体を休めることを優先しましょう。

2-3. 心を穏やかに保つ「精神養生」

季節の変わり目は、
精神的にも不安定になりやすい時期です。

  • 十分な休養と睡眠
    • 体力が消耗しやすい時期なので、無理をせず、
      十分な休養と質の良い睡眠を心がけましょう。

      昼寝をする場合は、30分程度の短い時間にとどめ、
      夜の睡眠に影響が出ないようにしましょう。
  • ストレスをためない工夫
    • 趣味の時間を大切にする、気の置けない友人と話す、
      軽い散歩に出かけるなど、
      自分なりのストレス解消法を見つけて実践しましょう。
  • 焦らず穏やかに過ごす
    • 土用は、次の季節への準備期間です。

      無理に活動的になるのではなく、心身を休ませ、
      ゆっくりと過ごすことで、次の季節にスムーズに移行できます。

まとめ:土用の養生で、心身ともに健やかな夏を

土用は、東洋医学において季節の変わり目の重要な時期であり、
特に高齢者にとっては体調を崩しやすい「注意期間」です。

しかし、
この時期に「消化器を労わる食養生」、「湿気と熱から体を守る生活養生」、
そして「心を穏やかに保つ精神養生」を意識して取り入れることで、
心身ともに健やかに過ごし
来る本格的な夏を乗り切る力を養うことができます。

高齢者の皆さんが、東洋医学の知恵を日々の生活に取り入れ、
土用を養生のチャンスと捉えることで、
より充実したQOLを送れることを願っています。


この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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