毎日の食事と健康に直結する『口腔機能』の重要性

口腔機能」と聞いても、
あまりピンとこないかもしれません。

歯磨きや虫歯予防は意識していても、
それ以外の「口の機能」まで考えている人は少ないのが現状です。

しかし
口腔機能は、私たちが毎日を健康に、
そして楽しく過ごすために欠かせない、
非常に重要な役割を担っています。

特に高齢者の方は、
口腔機能が衰えると、
単に食事がしにくくなるだけでなく、
全身の健康に深刻な影響を及ぼすことがわかっています。

このブログでは、
口腔機能とは何か、なぜその維持が重要なのか、
そして今日からできる簡単なケア方法まで、
誤嚥性肺炎低栄養といったキーワードにも触れながら、
詳しく解説します。


1. 「口腔機能」って何?3つの重要な役割

口腔機能とは、
食べ物を食べたり、言葉を話したり、
表情を作ったりする、口の周りや口の中の機能全般を指します。

具体的には、以下の3つの役割が特に重要です。

  • 食べる機能(摂食嚥下機能)
    • 食べ物を噛み砕き(咀嚼)、唾液と混ぜ合わせ、
      飲み込む(嚥下)までの一連の動作です。

      私たちが食事を美味しく、
      安全に楽しむための基本となる機能です。

噛む力や飲み込む力が衰えると、
食べ物が喉に詰まったり、
気管に入ってしまったりするリスクが高まります。

  • 話す機能(構音機能)
    • 舌や唇、顎などを動かして、
      言葉を正確に発音する機能です。

      円滑なコミュニケーションには欠かせません。

構音機能が衰えると、滑舌が悪くなり、
人との会話が億劫になってしまうことがあります。

  • 口の自浄作用と細菌の増殖抑制
    • 唾液は、口の中の食べかすを洗い流し、
      細菌の増殖を抑える役割があります。

唾液の分泌量が減ると、
口の中が不潔になりやすく、
虫歯歯周病、口臭の原因になります。


2. 口腔機能が衰えるとどうなる?健康への深刻な影響

口腔機能が衰えると、
食事や会話がしにくくなるだけでなく、
全身の健康に様々な影響を及ぼします。

  • 誤嚥性肺炎のリスク増大
    • 食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥」といいます。

      口腔内の細菌を含んだ唾液が気管に入ることで、
      誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが高まります。

      特に高齢者は、飲み込む力が弱まり、
      誤嚥が起こりやすいため、注意が必要です。

      誤嚥性肺炎は、命に関わることもある非常に危険な病気です。
  • 低栄養・脱水の原因
    • 噛む力や飲み込む力が衰えると、
      固いものが食べられなくなり、
      食事が偏りがちになります。

      食欲も低下し、食事量が減ることで、
      低栄養や脱水につながることがあります。

  • 認知機能の低下
    • 咀嚼(そしゃく)は、
      脳に直接的な刺激を与えます。

      しっかり噛むことで、脳の血流が良くなり、
      認知機能の維持・向上に繋がることがわかっています。

      口腔機能の低下は、この脳への刺激が減少し、
      認知機能の低下を招く一因と考えられています。

  • 社会性の低下
    • 滑舌が悪くなったり、
      食事に時間がかかったりすることで、
      人との会話や外食を避けるようになり、
      社会性が低下することがあります。

      これにより、
      精神的な孤独感を深めてしまうことにもつながります。

3. 今日からできる!口腔機能を維持する簡単なセルフケア

口腔機能の衰えは、
日々のちょっとしたケアで予防・改善することができます。

  • 毎日の歯磨きと口腔ケア
    • 毎食後の歯磨きはもちろん、
      舌ブラシを使って舌の汚れを取ったり、
      歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯間の汚れも取りましょう。

      清潔な口腔環境は、誤嚥性肺炎のリスクを減らす第一歩です。

  • 「パタカラ」体操
    • 舌や口の周りの筋肉を鍛える体操です。

      「パ」「タ」「カ」「ラ」という言葉を、
      それぞれ大げさに、はっきりと発音します。

      これを繰り返し行うことで、
      摂食嚥下機能や構音機能の維持に繋がります。

    • 「パパパパ」「タタタタ」「カカカカ」「ララララ」と、
      それぞれ5回ずつ連続で発音します。

  • 唾液腺マッサージ
    • 口の中が乾燥しやすい方は、
      唾液腺をマッサージすることで、
      唾液の分泌を促しましょう。

    • 耳の前にある唾液腺を人差し指でくるくると回したり、
      顎の下にある唾液腺を親指で優しく押したりします。

  • 食事の工夫
    • 食事の際は、一口ずつ、よく噛んで食べましょう。

      よく噛むことで、唾液の分泌も促されます。

      また、
      ムース状やゼリー状の食べ物、
      とろみのある汁物など、飲み込みやすい工夫をすることも大切です。

4. 専門家への相談も重要

口腔内の状態は、
自分ではなかなか正確に把握しきれないものです。

定期的に歯科医院を受診し、
歯科医師や歯科衛生士に相談することも重要です。

  • 定期的な検診
    • 歯周病や虫歯の早期発見、入れ歯の調整、
      専門家によるクリーニングなど、
      定期的な検診は口腔機能の維持に不可欠です。

  • 口腔リハビリテーション
    • 専門家による口腔内の評価を受け、
      摂食嚥下機能を向上させるための
      リハビリテーションを受けることもできます。

まとめ:口腔機能の維持は、全身の健康への投資

口腔機能の維持は、
健康で豊かな生活を送るための「土台」です。

単に歯磨きをするだけでなく、
口の体操や食事の工夫をすることで、
誤嚥性肺炎低栄養認知機能の低下といった
様々なリスクを減らすことができます。

今日からでも、
パタカラ体操唾液腺マッサージ
日課に取り入れてみませんか?

あなたや大切なご家族の健康を守るために、
口腔機能への意識を少し変えてみましょう!

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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