認知症と老人性うつ:似ているようで違う、二つの病気の特徴と対策

「最近、がぼーっとしていることが多い」

「以前より元気がないし、物忘れも増えた…」

このような変化に気づいたとき、
認知症かもしれない」と
不安になる方は少なくありません。

しかし、
その症状は老人性うつである可能性も考えられます。

認知症老人性うつは、
物忘れや意欲の低下など、似たような症状が現れるため、
区別が難しいことがあります。

しかし、
両者には明確な違いがあり、
治療法接し方も大きく異なります。

このブログでは、
認知症老人性うつの共通点と相違点を分かりやすく解説し、
それぞれの適切な対策法をご紹介します。

早期に正しい理解を深めることで、
や大切な家族の心身の健康を守るための第一歩を踏み出しましょう。


1. 認知症と老人性うつの共通点

両者に共通して見られるのは、
主に以下の3つの症状です。

  • 物忘れ
    どちらの病気でも記憶力の低下が見られます。

    特に、
    新しい出来事を覚えられないといった
    短期記憶の障害が目立ちます。

  • 意欲・活動性の低下
    以前は積極的に行っていた趣味や外出に
    興味を示さなくなり、
    何事にも意欲がわかない状態になります。

  • 精神的な不安定さ
    漠然とした不安、イライラ、不眠
    といった精神的な症状が現れることがあります。

これらの症状が似ているため、
自己判断で「認知症だろう」「年のせいだろう」
と決めつけてしまうのは非常に危険です。


2. 認知症と老人性うつの相違点:見分けるためのチェックポイント

症状の現れ方や経過に、
両者を見分けるための重要なポイントがあります。

認知症老人性うつ
物忘れの特徴体験そのものを忘れる。「朝食を食べたこと」自体を忘れてしまう。自分の物忘れに自覚がないことが多い。体験の細部を忘れる。「朝食に何を食べたか」といった詳細が思い出せない。自分の物忘れを自覚し、悲観することが多い。
症状の現れ方症状は徐々に進行することが多い。夜間に興奮したり、徘徊したりする症状(BPSD)が見られることもある。症状は比較的急激に現れることが多い。気分の落ち込みや不眠が先行して見られる傾向がある。
気分・感情喜怒哀楽が鈍くなり、感情の起伏が少なくなる。常に憂鬱で、悲観的な感情が支配的になる。涙もろくなることもある。
日内変動症状に日内変動がない、あるいは夕方から夜にかけて悪化する「夕暮れ症候群」が見られることがある。症状が午前中に強く、午後から夕方にかけて少し楽になる傾向がある。
言動質問に対して、事実と異なる返答をすることがある。論理的な思考が難しくなる。質問に対して、「わからない」「どうせダメだ」と答えることが多い。考えることを放棄する傾向が見られる。

これらの違いはあくまで目安です。
正確な診断には、専門医の診察が不可欠です。

3. それぞれの適切な対策と接し方

認知症老人性うつでは、
アプローチの仕方が全く異なります。

認知症の対策と接し方

認知症は、脳の病気であり、
現在のところ根本的な治療法は確立されていません。

そのため、
症状の進行を緩やかにし、
と家族のQOLを維持することが主な目的となります。

  • 受診の重要性:
    まずはかかりつけ医やもの忘れ外来などの専門医に相談し、
    適切な診断を受けることが大切です。

  • 環境を整える
    混乱や不安を避けるため、生活環境をシンプルにし、
    ルーティン(決まった日課)を作ることが有効です。

  • 生活リハビリ
    自分でできることはできるだけにやってもらうことで、
    残存能力を維持し、自信を持ってもらいます。

  • 共感と受容
    事実と異なることを言っても否定せず、
    の感情に寄り添い、受け入れる姿勢が大切です。

  • 介護サービス
    家族だけで抱え込まず、
    デイサービス訪問介護といった介護サービスを
    積極的に活用しましょう。

老人性うつの対策と接し方

老人性うつは、
適切な治療によって改善する可能性が高い病気です。

  • 受診の重要性
    心療内科や精神科を受診し、
    適切な診断と治療(薬物療法や精神療法)
    を受けることが大切です。

  • 安心できる環境
    焦らせたり、励ましすぎたりせず、
    「ゆっくり休んで大丈夫だよ」という
    安心できる言葉かけを心がけましょう。

  • 少しの成功体験
    ほんの些細なことでも、
    できたことに対して
    「ありがとう」「すごいね」と褒めることで、
    自己肯定感を高めるサポートをします。

  • 適度な気分転換
    本人が望む範囲で、
    散歩や日当たりの良い場所で過ごすなど、
    気分転換を促しましょう。

  • 無理に原因を探らない
    「なぜ気分が落ち込んでいるの?」
    と無理に原因を探るのではなく、
    の気持ちに寄り添い、
    話を聞いてあげることが重要です。

まとめ

認知症老人性うつは、
一見すると似ていますが、
その病態も対策法も異なります。

どちらの場合も、
最も大切なのは「おかしいな?」と感じたときに、
一人で抱え込まず、
すぐに専門医に相談することです。

早期に正しい診断を受けることで、
認知症の進行を緩やかにし、
老人性うつであれば回復へと導くことができます。

大切なの未来のために、
専門家の力を借り、
正しい知識と愛情を持って向き合っていきましょう。

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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