認知症ケアで大切なこと:介護する側が知っておきたい3つの心構え

認知症と診断されて、どうすればいいか分からない」

「何度も同じ話をされて、ついイライラしてしまう…」

認知症介護は、
身体的な負担だけでなく、
精神的なストレスも大きいものです。

認知症は、ただの「物忘れ」ではありません。

ご本人の世界では、
不安や混乱過去と現在の境目が曖昧になる、
非常に苦しい状態が続いています。

この状況で、
私たちが良かれと思ってする行動が、
かえってを追い詰めてしまうことも少なくありません。

このブログでは、
認知症ケアにおいて介護者が知っておくべき、
最も大切な3つの心構えについて解説します。

これらの視点を持つことで、
との関係を穏やかに保ち、
介護ストレスを減らすヒントを見つけていきましょう。


1. 「病気のせい」と割り切る:ご本人の言動を「性格」と結びつけない

認知症ケアで最も重要なのは、
ご本人の言動を「性格」や「わがまま」
と結びつけず、「病気のせい」と割り切ることです。

  • なぜこの心構えが大切か?
    • が暴言を吐いたり、
      介護拒否をしたりすると、
      私たちは「なぜこんなことを言うの?」
      と傷つき、怒りを感じてしまいます。

      しかし、これらの言動は、
      ご本人が認知症によって不安や混乱を感じ、
      それをうまく表現できないが故に起こるものです。
    • これを「病気のせい」と捉えることで、
      感情的になるのを避け、
      冷静にご本人のSOSを読み取ることができます。

  • 具体的な実践
    • 「また同じ話をしている」
      →「ご本人の世界では、それが新しい出来事なのだな」
    • 「物を盗られたと疑う」
      →「記憶が混乱して、不安になっているのだな」
    • 「お風呂に入りたがらない」
      →「お風呂が怖い場所、何をするかわからない場所になっているのだな」

ご本人の言動を
「病気の症状」として客観視することで、
あなたの心はぐっと楽になります。


2. 否定しない:ご本人の世界に寄り添う

認知症の方の記憶や認識は、
私たちが生きる現実とは異なっています。

介護者は、ご本人の世界を
「間違っている」と否定するのではなく、
その世界に寄り添うことが大切です。

  • なぜこの心構えが大切か?
    • 「ここは家だよ」「もうご飯は食べたでしょ」
      正論をぶつけても、ご本人には伝わりません。

      むしろ、
      否定されることで、
      「この人は私のことを理解してくれない」と感じ、
      孤立感や不安を深めてしまいます。
    • ご本人の世界を否定しないことは、
      安心感と信頼関係を築く上で不可欠です。

  • 具体的な実践
    • 「家に帰りたい」
      →「帰りたいんですね、寂しいね」と共感する。
    • 「この人は誰?」
      →「お友達だよ」などと、
      ご本人が安心するような優しいウソをつく。
    • 「今日は雨が降っているね」(実際は晴れ)
      →「そうね、雨が降っているような気分になるね」と同調する。

ごまかしは悪いことだと思われがちですが、
ご本人の安心が最優先です。

事実を伝えることで混乱するくらいなら、
ご本人の世界を尊重してあげましょう。

事実かどうかではなく、
ご本人が見ている世界を
そのまま共感してあげることが大切です!


3. 一人で抱え込まない:「完璧な介護」を手放す勇気を持つ

認知症ケアは、
一人で全てを背負い込むにはあまりにも大きな負担です。

介護長期戦であり、
介護者自身の心身の健康を保つことが、
介護を続けていく上で最も大切なことです。

  • なぜこの心構えが大切か?
    • 理想の介護を追求するあまり、
      介護者が燃え尽きてしまう
      介護うつ」になるケースが少なくありません。
    • 完璧な介護を目指すのではなく、
      「頑張りすぎない」ことを
      自分に許す勇気を持つことが、
      介護ストレスを減らす第一歩です。

  • 具体的な実践
    • 地域のサービスを頼る
      地域包括支援センターケアマネジャーに相談し、
      デイサービス訪問介護といった
      介護サービスを積極的に活用しましょう。
    • 家族や友人と協力する
      兄弟姉妹や親戚に協力を求めたり、
      介護経験者に相談したりして、
      悩みを共有しましょう。
    • 自分の時間を作る
      趣味の時間や、友人との食事など、
      介護から離れてリフレッシュする時間を持つことは、
      介護者にとって不可欠です。


まとめ

認知症ケアで大切なのは、
特別な知識や技術以上に、
ご本人を「一人の人間として尊重する」という心構えです。

「病気のせい」と割り切ることで、
ご本人の言動に一喜一憂しなくなります。

「否定しない」ことで、信頼関係が深まります。

そして「完璧な介護を手放す」ことで、
ご本人もあなたも笑顔で過ごせる時間が増えます。

これらの心構えを少しずつ実践して、
穏やかな日々を築いていきましょう。

認知症ケアで一番大切なことは
相手との信頼関係を築くことです

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

目次