認知機能を構成する6つの要素:脳の健康を多角的に捉える

認知機能」と聞くと、
「記憶力」を一番に思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、
私たちが日常生活を送る上で欠かせない認知機能は、
一つの能力だけではなく、
複数の要素が複雑に絡み合って成り立っています。

これらの要素を理解することは、
認知症の早期発見や予防だけでなく、
自分の脳の得意なこと、
苦手なことを知る上でも非常に役立ちます。

このブログでは、
認知機能を構成する6つの主要な要素について解説します。

これらの要素をバランス良く鍛えることで、
いつまでも健やかな脳を保ち、
自分らしい生活を送りましょう。


1. 記憶力(Memory)

記憶力は、
最もよく知られている認知機能の要素です。

出来事や情報を覚えて、
必要な時に思い出す能力を指します。

  • 短期記憶
    数秒から数分間、
    情報を一時的に保持する能力
    (例:電話番号をメモするまでの間、覚えておく)

  • 長期記憶
    数時間から数年、
    あるいは一生にわたって情報を保持する能力
    (例:子どもの頃の思い出、自転車の乗り方)

認知症の初期に最も低下しやすいのが、
新しい出来事を覚える短期記憶です。

2. 注意力(Attention)

注意力は、
特定の物事に意識を集中させ、
それ以外の刺激を無視する能力です。

  • 持続的注意
    一つの作業に集中し続ける能力
    (例:読書や映画鑑賞)

  • 選択的注意
    2つ以上の情報の中から、
    必要な情報だけを選び取る能力
    (例:騒がしい場所で、相手の話を聞き取る)

  • 分配的注意
    複数のことを同時に行う能力
    (例:料理をしながら会話をする)

注意力が低下すると、
ケアレスミスが増えたり、
会話が途切れがちになったりすることがあります。

3. 実行機能(Executive Function)

実行機能は、
目標を立て、計画を立て、それを実行し、評価する
一連の能力です。

  • 計画力
    物事を順序立てて考える能力
    (例:旅行の計画を立てる)

  • 柔軟な思考力
    状況の変化に合わせて、
    考え方や行動を変える能力
    (例:急な予定変更に対応する)

  • 問題解決能力
    課題を見つけ、
    解決策を考える能力

実行機能が低下すると、
段取りが悪くなったり、
衝動的な行動が増えたりすることがあります。

4. 言語機能(Language)

言語機能は、
言葉を理解したり、話したり、書いたり、
読んだりする能力です。

  • 言語理解
    相手の言葉や文章の内容を理解する能力。

  • 言語表出
    自分の考えを言葉で表現する能力。

言語機能が低下すると、
「あれ」「これ」といった代名詞が増えたり、
言葉が出てこなくなったりすることがあります。

5. 空間認識能力(Visuospatial Function)

空間認識能力は、
物体や空間の形、大きさ、位置関係を把握する能力です。

  • 場所の認識
    今いる場所がどこなのかを認識する能力。

  • 物体の認識
    物の形や立体感を把握する能力。

  • 道案内
    地図を読んだり、道順を覚えたりする能力。

空間認識能力が低下すると、
慣れた道で迷子になったり、
物の置き場所が分からなくなったりすることがあります。

6. 社会的認知(Social Cognition)

社会的認知は、
他者の感情や意図、社会的な状況を理解し、
適切に行動する能力です。

  • 感情認識
    相手の表情や声のトーンから感情を読み取る能力。

  • 共感
    相手の立場になって物事を考える能力。

  • 社会性の維持
    社会的なルールやマナーを守って行動する能力。

社会的認知が低下すると、
相手の気持ちを汲み取ることが難しくなり、
人間関係のトラブルにつながることがあります。


まとめ:多角的なアプローチで脳を鍛える

認知機能の低下は、
これらの要素が一つずつ、
あるいは複数同時に衰えることで起こります。

認知症の予防には、
記憶力だけでなく、
注意力実行機能言語機能など、
多角的に脳を鍛えることが重要です。

読書、パズル、新しい場所への旅行、
友人との会話、運動など、
日々の生活に様々な刺激を取り入れることで、
すべての認知機能をバランス良く維持していきましょう。

この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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