介護の落とし穴!?そのせいで余計に動けなくなってるかも…

「大変だから、できることは何でもやってあげたい」

そう思うのは、
への愛情からくる自然な気持ちです。

しかし、その優しさが、
かえっての自立する力や生きがいを奪ってしまう
過剰介護」につながることがあります。

私たちは、
QOL(生活の質)を高めるために、
一見遠回りに見える「生活リハビリ」の視点を持つことが
非常に重要です。

このブログでは、
にとっての「自立」とは何かを再考し、
「何でもやってあげる」ことの隠れた弊害、
そして生活リハビリがいかにの心身を活性化し、
いきいきとした毎日を取り戻すかを、
具体的な例を交えながら解説します。

お互いが笑顔でいられる介護のヒントを見つけていきましょう!


1. 介護の落とし穴:「過剰介護」が奪うもの

過剰介護」とは、
高齢者が自分でできることまで先回りして手伝ってしまったり、
必要以上に介助してしまったりすることです。

良かれと思ってやっていることが、
なぜ弊害となるのでしょうか。

  • 身体機能の低下を早める
    • 人間の体は使わないと衰えていきます

      例えば、
      食事の介助を全てしてしまうと、
      は箸やスプーンを使う機会を失い、
      腕や指の筋力が衰えます。

      ベッドから起き上がるのを手伝いすぎると、
      足腰の筋力やバランス感覚が落ち、
      かえって転倒リスクが高まることもあります。
    • その結果、
      本来ならもっと長く保てたはずの身体機能が早く低下し、
      より多くの介護が必要になる悪循環に陥ります。
  • 認知機能の低下を促進する
    • 日常生活の中には、
      脳を活性化するヒントがたくさん隠されています。

      献立を考える、買い物リストを作る、調理の手順を考える、
      着る服を選ぶ、といった些細な行動も、
      脳にとっては重要なトレーニングです。

      これらを全て代行してしまうと、
      自分で考える機会、選択する機会、
      判断する機会を奪ってしまいます。
    • その結果、
      脳への刺激が減少し、認知症の進行を早めてしまう可能性があります。
  • 意欲や生きがいを失わせる
    • 「自分は何もできない」
      「人に頼ってばかりいる」と感じることは、
      高齢者の自尊心を深く傷つけます。

      が自分でできることを見つけられなくなると、
      「何のために生きているのか」という無力感や、
      孤立感を深めてしまいます。
    • その結果、うつ状態になったり、
      閉じこもりになったりして、精神的なQOLが著しく低下します。
  • 介護者の負担が増大する
    • 短期的には「やってあげた方が早い」「手伝う方が楽」
      と感じるかもしれませんが、
      過剰介護は結果的にの自立能力を奪い、
      より多くの介護が必要な状態へと進行させます。
    • その結果、
      長期的には介護者の負担が雪だるま式に増大し、
      共倒れのリスクを高めます。

できないことを手伝う必要はありますが、
できることまで手伝ってしまうと
より介護負担が増大してしまいます!


3. 「生活リハビリ」の重要性:日常の中に隠されたリハビリの機会

過剰介護の対極にあるのが、
生活リハビリ」という考え方です。

これは、特別な訓練の時間を設けるだけでなく、
高齢者が日常生活の中で行える動作そのものをリハビリテーションと捉え
残された能力を最大限に引き出すことを目指します。

  • 自己肯定感の向上
    • 「自分でできた!」という小さな成功体験の積み重ねは、
      高齢者にとって何よりの自信と喜びになります。
    • その結果、自尊心が高まり、意欲的に生活を送る原動力となります。
  • 心身機能の維持・改善
     毎日繰り返し行う生活動作は、
    機能訓練の効果も期待できます。  

    例えば、
    自分で服のボタンを留める、歯を磨く、
    食事を準備するといった動作は、指先や体の協調性を養います。
  • 生きがいと社会参加の促進
    • 「自分にも役割がある」と感じることは、
      高齢者の生きがいに直結します。

      例えば、
      食事の準備を手伝ってもらう、洗濯物を畳んでもらう、
      といった小さな役割を与えることで、
      「誰かの役に立っている」という感覚が生まれます。
    • その結果、孤立感を和らげ、
      社会とのつながりを感じる機会が増え、精神的なQOLが向上します。
  • 介護者の負担軽減
     が自分でできることが増えれば、
    当然、介護者の負担は減ります。

    これは、親のためだけでなく、
    あなた自身の生活を守るためにも不可欠です。
    • その結果、介護の負担が軽減されることで、
      介護者が仕事との両立を図りやすくなり、
      心身の健康を保ちやすくなります。

生活自体をリハビリと捉えることで
長い期間、自宅で暮らせるようになります!


4. 生活リハビリを実践するための具体的なヒント

生活リハビリを始めるには、
少しの工夫と忍耐が必要です。

  • 「できること」を探す視点を持つ
    • 「何ができないか」ではなく、
      「何ならできるか」という視点での行動を観察しましょう。

      たとえ時間がかかっても、
      少し手間がかかっても、
      自身ができることは見守り、促すことが大切です。
    • 例えば
      「自分でシャツのボタンを一つだけ留めてもらう」
      「箸を握ってもらうだけでも」
      「靴下を片方だけでも履いてもらう」 など
  • 声かけと環境調整で「やる気」を引き出す
    • 「危ないからやめて」「私がやるから」
      といった否定的な言葉ではなく、
      「自分でやってみようか」「ここまで手伝おうか」
      「次はどうする?」と、
      の意欲を引き出す声かけを心がけましょう。
    • 環境調整
      手すりの設置、滑りにくい床、分かりやすい収納、
      明るい照明など、
      が安全に自分で行動できる環境を整えることも重要です。
    • 例えば
      「お風呂まで一人で行けるように、手すりをつけようか」
      「着替えやすい服を選んでみようか」 など
  • 「見守る」勇気を持つ
    • が自分でやろうとしている時、
      転んだり失敗したりするのではないかと不安になるかもしれません。

      しかし、
      全て先回りして手伝ってしまうのではなく、
      見守る勇気が必要です。

      危険がない範囲で、
      失敗しても大丈夫だと安心できる環境を作りましょう。
    • 例えば
      服のボタンを留めるのに時間がかかっていても、
      焦らせず、口出しせずに見守る。

      ただし、
      転倒の危険がある場所では、近くで見守るなど配慮が必要です。
  • 専門家のサポートを活用する
    • どんなに頑張っても、
      家族だけで生活リハビリを継続するのは難しいこともあります。
    • 専門家の役割
      理学療法士や作業療法士は、の残された能力を評価し、
      その人に合った具体的な生活リハビリの方法を教えてくれます。

      ケアマネジャーは、
      生活リハビリを積極的に取り入れているデイサービスや、
      訪問リハビリテーションの導入などを提案してくれます。
    • 例えば
      週に数回、生活リハビリに力を入れているデイサービスに通うことで、
      他の高齢者から刺激を受けたり、
      専門家から効率的なリハビリを教わったりすることができます。
  • 小さな成功を共有し、喜び合う
    • ができたこと、努力したことを、具体的に褒め、
      喜びを分かち合いましょう。

      「すごいね!」「頑張ったね!」「ありがとう!」
      といった言葉は、の次への意欲に繋がります。

5. 完璧を目指さない:「ほどほど」が一番大切

生活リハビリは、の自立を促し、
QOLを高めるための非常に有効なアプローチですが、
完璧を目指す必要はありません。

  • 焦らない: のペースを尊重し、焦らずゆっくりと進めることが大切です。
  • 無理強いしない: が拒否する時は、無理強いせず、一旦立ち止まる勇気も必要です。
  • できる範囲で継続する: 全てを生活リハビリに置き換えるのではなく、できることから少しずつ取り入れていきましょう。

親の介護」において、
あなたの優しさは不可欠です。

しかし、
その優しさが「過剰介護」にならないよう、
賢く「生活リハビリ」を取り入れる視点を持つことで、
は自分らしい生活を送り続け、
あなた自身も介護負担を軽減しながら、
と共に笑顔で過ごせる時間が増えるはずです。


この記事を書いた人

藤倉 健太のアバター 藤倉 健太 日本高齢者QOL学会 理事

・了德寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科卒業
・柔道整復師/健康運動指導士/中学•高等学校教員免許
介護施設でのリハビリ(機能訓練)や体操指導を中心に、0〜106歳までの方々の健康を支えてきました。日本高齢者QOL学会の理事として、巷に溢れる健康情報を論文ベースにわかりやすく伝えていきます。

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